売れるか売れないかじゃない、買うか買わないかだ

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  このカメラ、売れないはずだ。売れる要素が無い。画質を求めれば普通の一眼がある。携帯性を求めるならコンデジがある。その間にはマイクロフォーサーズがある。
 じゃあなんでこのカメラは生まれたのか?正直今現在存在意義はほとんど無い。唯一つ、リコー製だということ以外は。

 あなたがスナップでGXRを使おうというなら、止めたほうがいい。GX200の後継機として使いたいなら、別の機種を勧めよう。はっきり言ってこのカメラは、誰にもオススメできない。


 今までファーストインプレッション的だったレビューの、正式版です。記事だいぶ重複します。あと作例は無し。

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 コストパフォーマンスは最悪である。よくよく考えれば、今回の出費はE-30を買ったときとだいたい同じである。ほんの一ヶ月前まで、全く購入する気はなかった。発想は面白いが、企画倒れ。売れっこないし買いっこない。よくこんなものにリコーはゴーサイン出したものだ。こんなもの買うぐらいならまだマイクロフォーサーズにお布施した方がマシだ。けど結果的に買ってしまった。
 今までも散々述べているが、買った理由はGX200の活躍だ。GX200を買ってからが、私の写真生活二度目の変革だった。これまで広角もマクロレンズもコンパクトカメラも持っていなかった私に、すべてを教えてくれた。当時メインだったE-330を退けメインとなり、これじゃいかんとE-30を導入させた存在。それがGX200だった。
 日本全国津々浦々旅に行くと分かり、ああ、荷物が制限されるな、と思った。無い金を振り絞り、私は新しいレンズとして14-150mmを導入した。これと50mmマクロ、そしてGX200があれば全く問題無いと思い出発した。
 結果として、間違いではなかったのだが、必ずしも思った通りには行かなかった。まず荷物の制限が予想以上だったこと。デイバッグ一つも持ち歩けない状況が多かった。さらに天候に恵まれず、一眼が出動できたのは数多くの状況で、わずか2回3回という散々な結果だった。
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 そのため、活躍したのはポケットに入るGX200だった。スナップからマクロまで、手堅くカバーするこのカメラは、もう相棒と呼んでも過言ではない。
 デザイン、サイズ、重量、操作性、画質、至るところまで不満の無いカメラだった。ただ一つの泣き所は、高感度時のノイズだ。同じ時代のカメラと比べても明らかに多いそれは、ISO200すら使うのもためらわされた。また、どうしても「一眼画質」が欲しい状況もある。それは、一眼を持ち出すたびに感じた。
 見知らぬ土地をGX200片手に歩きながら、このぐらいのサイズの一眼があればと思っていた。そこで思ったのはフィルムカメラだった。フィルムは何だかんだ言って高画質だ。フルサイズは伊達じゃない。OM-1やペンFのような小さな一眼だと持ち運びも苦労しないだろう。が、やはり時代はデジタルだ。出先でのフィルムの補充や保管まで手が回りそうも無い。
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 次にオサレカメラであるマイクロフォーサーズだ。E-30よりも進化したセンサーを積んでいるので画質は保障されるが、店頭で触るたび「駄目だこりゃ」と感じてしまう。だが、現状これしか選択肢が無い。GF1は基本性能などかなり理想的なのだが、私、パナソニックのカメラのデザインが生理的に全く受け付けない。嘔吐するぐらい、まじでダサいと感じている。となるとオリンパスE-P1だが、こちらもデザインが強烈だ。なんというか、劣化ペン。高級機クラスの値段でありながら、廉価機であるペンEE-3にも劣り、ペンFとは比べ物にならないほどダサい。まあ正面からは許そう、が、後ろからのデザインはもうちょっとなんとかならんかったのか。そして何より、もはやオートで撮る以外まったく考慮されていないと思わせるほど、イライラする操作性はもはやお笑い。カメラメーカーとして恥を知れ、と言いたい。
 やっぱりマイクロフォーサーズは玩具なんだと感じている中、灯台下暗し的にいたのがGXRだった。まあそれでもこんなゲテモノ使えないしね〜と触ってみて前言撤回。マイクロなんとかと比べると頭3つぐらい飛びぬけて良い操作性、がっしりとしたボディに一目ぼれ。
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 旅を終え、次なるた旅に備え結局購入に至ってしまった。購入時に迷ったのは、どちらのカメラユニットを買うか、ということだ。というのも、旅の前に14-150mmを導入してしまって金が無かったのだ。GX200の後継機としてS10 24-72mmを導入するか、小型一眼としてA12 50mmマクロを導入するか。迷いに迷った末、導入したのは両方のカメラユニットだった。導入理由は、両方とも買わなければ、このカメラの価値は半減すると思ったからだ。
 そもそもGXRとは、カメラユニットを交換することで、まったく別のカメラに変身するカメラだ。カメラユニットをレンズユニットと呼ぶ人には、その時点でこのカメラを語る権利は無い。これまでのレンズ交換式カメラと同じ考え方は出来ないのだ。
 それなら違うカメラを持ち歩けばいい、という意見があるが、全くその通りだと思う。GXRはコンデジとしては大きい。S10 24-72mmを付けたGXRは、GX200よりも一回り大きく、重い。GX200で可能だった、「ジャケットのポケットに入れて持ち歩く」というのが躊躇われる。A12 50mmも同じで、鏡胴が出っ張っているので、マイクロフォーサーズのパンケーキに比べ収納時に嵩張ってしまう。
 GXRの強みは、操作性、バッテリー、記録メディアを統一できることにある。というかそれだけである。まずそこに魅力を感じない人は、素直に買わないほうがいい。 
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 結果的に購入し、理論上はGXRだけで、コンデジと一眼の一人二役を演じれるようになった。
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 システムとしてはここまで小さく収められる。が、やはりGXRにA12 50mmを組み合わせても一眼の代わりにはならない。それはマイクロフォーサーズにも言えることで、やはりある程度の大きさは必要で、光学式のファインダーも必要だ。当初の目的を果たせたとは言えないが、最善は尽くした。実際使ってみて、ストレス無く使えている。操作性や画質に不満は無い。ちょっと大きくて重いのが気になるが、マイクロフォーサーズはもっと重いので我慢だ。
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 S10 24-72mmはGX200のレンズを引き継いだGX300とも言えるものだ。GX200でレンズの性能は分かっているので、気になったのは高感度性能のみ。高感度ノイズは大幅に改良されており、普通に使うにはISO800まで問題ないという結果に。一応3200まで設定でき、さすがにそこまで行くとノイズは出るが、GX200ほどではない。縮小するなら1600も実用可能である。オートフォーカスも早くなっており、GX200からさらに進化した操作性もありサクサク撮影できる。
 唯一の泣き所は起動速度。0.5秒ほど起動が遅くなっている。逆に終了は早い。ユニット化の弊害なのだろうが、とっさの撮影時に問題となる。
 心の底から、一つのカメラ、GX300として発売して欲しかった。ちなみにDW-6やTC-1はHA-3経由で取り付けられるが、ファームウェアが完全ではないらしく、設定次第では付けても液晶左の焦点距離が変わらない。リコーさん早めのバージョンアップよろしく。
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 GXRの目玉、A12 50mm F2.5。ちょっと使ってみて分かったのは、現在保有するすべてのカメラの中で最高の画質を誇っちゃう困ったちゃん。ZD竹グレードも描写力は上だろうが、センサーの性能が足を引っ張って、総合的には上となる。どんだけへぼいんだフォーサーズセンサー。
 標準レンズなので、あらゆる状況で利用できるのが強み。マクロも問題なし。高性能なAPS-Cセンサーでレンズの性能を出し切れる。ISOは1600まで実用。3200も縮小すれば使える。E-30よりも一段二段は上の高感度性能。ただし、E-30のように超強力な手振れ補正は無いので、ぶれるときはぶれる。自分がどんだけ手振れ補正に助けられていたかが分かるカメラユニット。
 難点は少しでも暗かったりマクロ域だと、とたんに使い物にならなくなるオートフォーカス。マニュアルフォーカスも標準域ならともかく、マクロだと使い物になるとはいえない。バージョンアップ後も根本的な解決とは言えず、まだまだ改善の余地あり。
 最大の弱点はシャッタースピードで、屋外では絞り開放で撮影を行うのは不可能になるほど遅い。レンズシャッター機なので、絞り開放だとシャッタースピードを早くできず、開放時は1/1000が最高である。少しでも晴れていると絞る必要が出てくる。ISOも200からスタートなので、せっかく開放から優れた描写をするのだがこれでは勿体無い。GX200のようにISO64などが選べればよかったのだが、NDフィルターなどは持っておいたほうが無難である。


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 グダグダと書いたが、結論を言うと「買うな」である。珍しくオススメしない。やはり、画質を求めるなら素直に一眼。携帯性を求めるなら素直にコンデジである。リコー製品を買うなら素直にGRDだ。あれは良い。最高のコンデジだ。キヤノンの出し惜しみ感満載のコンデジよりも良い。
 GXRの値段が半分ならオススメできるのだが、あまりにもコストパフォーマンスが悪い。次に控える旅が無ければ絶対に買わなかっただろう。そんなカメラだ。それでも50mmマクロの描写力は化け物で、GX300相当ユニットも期待以上の出来だ。ぶっちゃけ二つとも別々のカメラとして出してもらいたかった。買ったからには徹底的に使い潰すが、やっぱりGXRとS10 24-72mmはGX200の後継機としては大きくて重い。このユニットの出来がいいだけに、GX300が出なかったのが、本当に心残りである。